2016年11月26日(土)に,「Weekend Carpenters' Fes」 というワークショップを実施しました。
雨を予測した天気予報を裏切ってすっかり秋晴れの空の下,図書館南の広場が開催地です。
この場所は,2年ほど前から少しずつ整備の手が入れられてきた場所です。
初めの変化は,キャンパスがここに出来て以来ずーっと広場に向かって横っ面を見せ続けてきた図書館の壁面が,増床改修に合わせてアカデミックコアが作られたことで,ついに広場側へ向かって出入り口を開き,テラスとファニチャーで開放的な空間が演出されたことでした。この時,ハートフル法に基づいて,テラスまで上がる車いす用のスロープが建設されました。とてもよい傾向ですが,残念ながら,このスロープの壁面は白くペイントされ,新たな無機質な壁面を広場側へ向けてしまいました。
第二の変化は,羽島の財団である国際クラブが,地元である大学において国内外の人材の交流が盛んになることを願い,新たな井戸を掘削して泉を創って寄付をしたいという申し出から始まりました。地盤・環境衛生・空間デザイン(私)の各専門家と,学内財政・施設・学術国際の各担当が集まる委員会が開かれ,新たな大学のキャンパスマスタープランに従って,今後改善されていく図書館前の広場空間の傍ら(ちょうど上記のスロープ壁面の前)に設置することがふさわしいと決まり,私がデザイン監修をさせていただくことになりました。
100m以上の深さの井戸を掘削し,汲み上げる地下水は,良質な軟水です。
寄付者のご意向に従いながら,私は次のようにデザインしました。箱型の小さな施設の上盤に水が湧き出る仕掛けで,溢れ出た水が箱の前面に沿って流れ落ち,地下の埋設管を通って広場東側の池へ灌ぐ滝となります。一方で,泉の左右両側面に取り付けられた真鍮の蛇口を捻れば,別系統の新鮮な地下水が出ます。消毒用の塩素などを入れているわけではないので,万が一の責任を考えると「飲用」であると宣言するわけにはいきませんが,悪い水ではありません。
(玉石のある水槽に溜まっている水が蛇口から出てくる訳ではないので,ご安心を!)
これは,災害時など非常時に,地域を支える水源として利用することができるよう,デザインされたものです。この施設には「交流の泉」と名前が付けられ,2015年12月に寄付者とともに完成式典が開かれました。完成式典の様子はこちら(岐阜大学井戸「交流の泉」が完成しました)から。
しかし,この場所は,それでもまだ完成してはいません。
この空間のデザイン提案は,先に触れた背後のスロープ壁面に木質の覆いを取り付けて,交流の泉周辺をおしゃれな人懐っこい空間とすることを含んでいました。
2016年の今年度は,これを創る作業を,留学生を含む学生たちと一緒に行って,自分たちの場所を共有するイベントにしたいと思いました。自らつくることで,この場所に特別な愛着をもつ人が増えることでしょう。この点を国際クラブの方々にもご理解いただき,その材料費などを追加で寄付して頂ける運びになりました。
それが Weekend Carpenters' Fes,つまり日曜大工祭です。
実施にあたり,都市・景観研究室のメンバーには,日夜あれこれ細かなデザインを検討してもらい,準備に没頭してもらいました。また,全共講義の「フューチャーセンター実践Ⅱ」でも,数度にわたり準備のための議論を重ね,このイベントがだんだん作り上げられていきました。
実施3日前には,スロープのコンクリート面に特殊なドリルで穴を穿ち,アンカーを仕込み,アングル(L字の金具)を取り付けます。
もちろん,全て学生がやります。
そこに水が入らないようにコーキングをするなど,木材を取り付けるにも,念入りな準備が必要です。コンクリート壁を覆うのは,岐阜県産の杉材です。検討の結果,4㎝×4㎝の角材で縦格子をつくるデザインになりました。
その杉材には,裏面に参加者がサインできるという企画にしました。
呼びかけのポスターが,「君の名を大学に残そう!Would you like to join us upgrading our university look? Help install new 'Japanese Cedar' fence and leave your trace there by writing your name on it!」と誘います。
そして迎えたフェスの当日。
朝9時ごろになると,呼びかけに応じて40人以上の参加者が集まってきてくれました。半数ほどが留学生。朝から国際交流の熱気ムンムンです。工程は以下の通り。
① 杉材をやすりでこする。
② キシラデコール(防腐剤)を杉材に塗る。
乾いたらまた塗る(2度塗り)
③ ユニット(2本の横木に縦格子を取り付けたもの)を組み立てる。
④ 名前を入れる!
⑤ 壁に取り付ける。
(写真上左:行程①/右:行程②,下左:行程③/右:行程⑤)
しかし,DIYの醍醐味は,現場の条件に従って,すべて計画通りにいかないところです。
塗りすぎたキシラデコールが乾かないので次の作業がなかなかできない,組み立てが案外難しくうまく行かない!?,取り付けるボルトが足りない!!など,次々に出てくる不足の事態に参加者の創意で対処しながら,予定終了時刻の16時は大幅に超えながらも,なんとか日没頃に仕上げることができました。
参加者は,そんなてんやわんやのお祭りを楽しんでくれていたようです(後日聞いた話)。
さらにこの場所付近には,新たに植樹をして適切な日陰をつくり,交流の泉周辺にもっと居場所ができるようにしていく計画が議論されているところです。
近いうちに,これも実施しながら,さらに学内に魅力的な空間を増やしていくことになりますが,これを読んで興味を持った方がおりましたら,是非次は参加していただければと思います。
愛着のある大学キャンパスをつくっていきましょう!
工学部社会基盤工学科 准教授 出村嘉史