医学部医学科1年 佐々木雄作さんが提案した実験テーマが,JAXA(宇宙航空研究開発機構)が主催する「航空機による学生無重力実験コンテスト」に採択されました!
これは,全国の学生から航空機の無重力環境で実施したいアイデアを募集し,選定されたチームが自ら実験装置を製作し,航空機に搭乗して無重力状態を体験しながら実験を行うものです。
無重力実験の詳細は,JAXAホームページ(PCサイト)をご覧ください。
そして,医学系研究科医科学専攻3年 岩田ちひろさん,医学科生理学分野 森田啓之教授とチームを編成し,3月15日,16日の2日間,『オジギソウの無重力における挙動観察』というテーマで,航空機に搭乗して無重力実験を行いました。
提案者の佐々木さんから,体が宙に浮いた状態で行った実験のレポートが届きましたので,報告します!
実験概要
オジギソウは触れることで葉が閉じ,葉の柄が「おじぎ」をするように垂れ下がるという性質(接触性傾性運動)があります。このメカニズムは既にある程度解明されており,刺激による電気信号が折れ曲がる部分の運動器官である主葉枕(しゅようちん)に伝わることで主葉枕下部の水分が移動し,膨圧が低下して発生します。本実験では,この水分の移動に重力がどのように関わっているかをパラボリックフライトを用いて観察しました。
応募のきっかけ
応募のきっかけは,生理学教室の森田先生がこのコンテストの存在を教えてくれたことでした。最初は生理学的な,人やラットを用いた体液シフトの実験がやってみたいと思っていたのですが,良い実験テーマがどうしても思いつきませんでした。そこで,昔小学生の時の夏の自由研究でオジギソウを扱ったことがあったことを思い出し,単純に無重力ではオジギソウはどのように反応するのだろうという疑問が生まれました。今回はその案が運良く(笑)採用され,貴重な体験をすることができました。
実験結果
実験の結果は単純に言えば,オジギソウは無重力状態でも葉を閉じ枝が落ちます。しかし,地上での反応と比較すると運動の角度やスピードに差がありました。具体的には運動の角度は小さくなり,スピードも遅くなりました。これは1G環境下に受ける自重の影響がなくなり,純粋なオジギソウの運動が観察できたと解釈できます。これからはそういった地上との差を定量化して比較し,オジギソウの運動機序のメカニズムを明かしていきたいと思っています。
感想
オジギソウは植物なのに動く機構を持っている面白い植物です。このオジギソウの運動の仕組みは,先端が湾曲する内視鏡などにも応用されています。また,この神経をもたないオジギソウの刺激伝達のメカニズムを解明することにより,機械の伝達機構改良のヒントが得られたり,無電源で動く機械の開発ができるかもしれないと言われています。今回の私の無重力における実験が,そういった大きなテーマにつながっていくといいなと思っています。
このコンテストを通して,私は自分で実験テーマを考え,その実験を行うためにはどのような手法を取れば良いのかを考えました。こういった経験は普通の学生生活を送っているだけではなかなか体験できないものだと思います。また,今回の実験を通して人生で初めて無重力を経験しました。実験中身体が浮いているのはなんともいえない心地で,実験そっちのけでもっと無重力を楽しみたかったです(笑)。ほかにも,一緒に乗り合わせた他大学との交流もできました。こういった貴重な経験をいくつも体験できたという点で,このコンテストに応募してとても良かったなと思っています。
最後に,このコンテストに誘って頂き最後まで付き合って下さった生理学教室の先生方,この実験テーマを採用して下さったJAXA,JSF(財団法人日本宇宙フォーラム)のみなさん,素晴らしい無重力の世界を体験させて下さったDAS(ダイヤモンドエアサービス株式会社)のみなさん,ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
学生チームの皆さん,お疲れ様でした。貴重な体験でしたね。
今後もこの経験を活かしてがんばってください!
:広太郎